牧師 松矢龍造
3 章1～2 節「上にあるものを求めなさい」
起
キリスト者は、ご聖霊のバプテスマによって、キリストと共に十字架で霊的に死に、そしてキリストと共に霊的に復活しています。ならば救われた者に、ふさわしい生活が求められます。コロサイの信徒への手紙において、使徒パウロは、前半である１～2 章において、信仰の教理に関することを展開してきました。そして今日の御言葉である3 章から4 章という後半において、信仰に基づく生活や倫理の実践を展開しています。教理ない生活は、骨のないものとなり、生活のない教理は、うわべだけのものとなってしまいます。
承
3 章1 節の冒頭で、「さて、あなたがたは、キリストと共に復活させられたのですから、上にあるものを求めなさい」と始めています。「求めなさい」と訳された原文のギリシア語は、「探し求めなさい」「追及しなさい」「努めなさい」とも訳せます。正しい教理に基づいて考え、そして実践して生活することを追求しなさいと言われています。
転
上にあるものを求めるとは、何を求めるのでしょうか。上にあるとは、復活され昇天されたキリストが、神の右の座に着いておられます。右の座とは、栄誉と力を帯び、全宇宙と全霊の世界の最高の権威者となられたということです。そして私たちを、とりなしてくださる救い主でもあります。
この主イエス・キリストを意識的に心に浮かべて生きることがキリスト者の第一歩です。常にこのキリストを意識して生きることが、上にあるものを求めることです。
2 節には、上にあるものを心に留めなさいと言われています。人は誰でも、心にあることを外に現します。無意識であっても、知らず知らずのうちに、心にあることを行っています。ですから何を心に留めているかによって、考えも生活も大きく左右されます。
上にあるものに心を留めるとは、神様の観点から人生を見ることでもあり、あるいは神様が強く望んでおられることを探し求めることでもあります。それは地上のものに心を惹かれないようにすることにつながります。すなわち物質主義への対抗となり、また肉欲への対抗ともなります。そして人間の罪と堕落によって生じる悪徳に対抗することになります。
地上のものは、物質的には本来よいものでありながら、その用い方が悪いなら、神様に忌み嫌われ、救いに預かっている者にふさわしくありません。
旧約時代に、堕落して世の汚れに満ちたソドムの街を、ロトの妻は振り切ることが出来ませんでした。後ろを振り返ってはならないと御使いに言われたのに、振り返って塩の柱となってしまいました。
私たちの生活において、上なるものを求め、上なるものを心に留める際に、次のように問う必要があります。「それは神様にとって重要か」「永遠に価値があることかどうか」「神様を愛し、隣人を愛して仕えることなのか。」イエス様は、神の国と神の義を求めなさいと言われました。キリスト者は、この世を、より大きな永遠の世界を背景にして、神様の視点に立って見ることが必要となります。
それは具体的な生活では、統治する以上に仕え、復讐する以上に赦します。そして内なるキリストにお委ねするなら、ご聖霊なる神様が、私たちの内側を、造り上げてくださいます。地上に宝を積むのではなく、天に宝を積む歩みとなりますように。人が最後に残るものは、集めたものではなく、分ち与えたものであると言われます。
上にあるものは、イエス様が下さる無尽蔵な霊的な富であり、天来の喜びでもあります。さらに天国のことで、こころが満たされることでもあります。それは地上のことで、あれこれ気に病むことにはなりません。フィリピの信徒への手紙4 章6 節7 節「どんなことでも、思い煩うのはやめなさい。何事につけ、感謝を込めて祈りと願いをささげ、求めているものを神に打ち明けなさい。
そうすれば、あらゆる人知を超える神の平和が、あなたがたの心と考えとをキリスト・イエスによって守るでしょう。」
結
地上のものには一見、魅力があります。ヨハネの手紙一2 章16 節「なぜなら、すべて世にあるもの、肉の欲、目の欲、生活のおごりは、御父から出ないで、世から出るからです。」地上のものは、私たちを一見、引き付けます。悪魔も、イエス様を誘惑して、石をパンにせよ、神殿から飛び降りて奇跡を見せよ、この世の栄華を手にせよと言いました。また衣食住のことで、私たちは容易に明日を思い煩っていまいます。キリスト者は、地上にあっても、この世の者ではなく、霊的な復活を与えて下さった主のものです。神様の栄光を現し、永遠に神様を喜ぶ存在です。上なるキリストを見つつ、内なるキリストに委ねつつ、どんな場所やどんな時であっても、共にいてくださるキリストに信頼して、天国市民としての歩みとなりますように。
2011 年にアメリカで人気を博した曲の中の言葉で「You Only Live Once」「人生は一度きりだから」というものがありました。曲全体の流れは、人生を未来や他人のために犠牲にしないで、今の自分の幸福を最優先するという内容です。これは、他国より自国の利益を優先する、他人より自分の幸福を優先することです。それはまさに地上のものに心が引かれることです。その中で、私たちもまた、上にあるものを求め、上あにあるものに心を留めなければ、容易に引かれてしまいます。キリストと共に、世に対して十字架につけられ、キリストと共に復活した者として、救われて神の民、神の子とされた者にふさわしく歩むことが、御言葉と祈りとご聖霊によって出来ますように。(二人ずつ間隔をとって、互いに前を向いて分かち合いの時)